【THE・END】

きえないで

🎥「キリエのうた」

10月13日、公開初日に見てきました。

 

地元の映画館ではあまり客層に恵まれないことが多く、嫌な気持ちで見るのを回避するのに見たい映画は日にちを空けてから見に行きますがこれは我慢出来ず。

 

アイナが遂に銀幕デビューだ・・・!!!!!しかも主演!!!!

 

抽象的な感想を述べると、ストーリーとして面白みはあまりないかもしれないが見応えのある映画だな、ということ。岩井作品の陰鬱なのに爽やかな空気感、救われなさ、ああいったものが好きだとか耐性があるよって人は好きだと思います。あとアイナの歌がひたすらいいのでそれだけの為に行ってもいいかな。

 

上映時間が約3時間ありますが、結果的に私はほぼ泣いていました。登場人物の全てに少しずつ感情移入する点がありましてああ・・・ってなってしまう。言葉にならない心の奥の感覚が視覚化されるような。歌でもあるよね、感覚や感情だけは知ってる、それに名前を付けてくれるような。何にしろ、そういったものを生み出す人は尊敬してしまうなあ。

 

 

以下ネタバレ有

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

色々思うことがありすぎてとっ散らかった文章になってしまいそうなので、登場人物に分けてみようと思います。それぞれ魅力的でした。

 

【ルカ(アイナジエンド)】

震災で母と姉を失ってから心的ストレス、ショックで声が出なくなってしまった女の子。何故か歌を歌うことは出来る。アーティスト名はkyrie(キリエ)。亡くなった姉の名前である。アイナジエンドが演じるルカは驚くほどアイナで、監督がアイナに演じてほしいと思った理由がわかった気がした。普段は無邪気で可愛らしく、声が出せない分嬉しさが体に出るようなところや歌い出すと誰もが目を耳を見開きたくなるほどの歌声と表情、そのどれもがアイナジエンドだったんだよぅぅぅううう愛おしさ100000倍・・・・。きっとあなたはずっとなっちゃん松村北斗)が好きだったよね?と胸がきゅっとなる想いでした。

 

【キリエ(アイナジエンド)】

映画初出演、初主演で1人2役ってどんな苦行・・・!?と思いながら。先程ルカがアイナジエンドだったと書きましたが、姉のキリエもまた。アイナの書いた曲を聞けばわかる、彼女の闇や芯の部分。そういうところがキリエだった。ルカは表に出た部分というか。そんな感じ。一番見ていて苦しかったです。無垢で健気で無邪気で一生懸命でなっちゃんのことが心底大好きで、全てを赦してくれる女の子。そうそう出会えるものじゃないし残るけど、一緒に居てしんどいのもこのタイプ。こんなに綺麗に真っ直ぐな子っているのか?と思うと少し怖くなるのが人間な気がする。逃げたくなる。私はこの映画の中でキリエの笑顔が一番苦しかった。

「普通はおろして欲しいんじゃないの?」

多分キリエは何を答えても逆恨みなんかしないんだと思う。相手じゃなくて自分を消すタイプだ。私が好きなだけだから、のタイプだ。感情移入しかしない!!!!!!笑

 

【夏彦(松村北斗)】

結婚の約束もしていたキリエの恋人。

「見つからないで欲しいとも思っています。ずるい人間です。」

若い男が子供が出来たと言って急に腹を括れるわけもない、でもそれが酷いことで責任から逃げてるという自覚もある。だけど、だけど・・・の中彼女が亡くなったことでどこかホッとした自分がいたんだろう。その自分に気付いて、どうにもやりきれない自責の念が己を纏って縛られて動けないでいる。これも見ていてキツい。人間そんなに立派なもんじゃないからね、自分は今なんて酷いことを思ったんだろうと感じる瞬間もあると思うよ。理解できる。儚い男の子の役、合ってたなあ。

 

【イッコ(広瀬すず)】

ルカの高校時代の友人。ルカとはイッコの家庭教師をしていた夏彦を通じて知り合うことに。(この頃夏彦はルカを事実上引き取り一緒に暮らしていたので妹、と紹介してる)上京して路上で歌っているルカを見つけ再会。マネージャーとして応援してくれる。女を武器にして働いている、とスナック勤めの母を嫌悪していたが、結局自分のことを好きな金持ちの男に詐欺まがいなことをして生計を立てていた。なんかこれ、蛙の子は蛙じゃないけども結局同じことしてるなあっていう無情さというか。空っぽな感じ。つらかった。

 

 

 

個人的には最後のライブのシーンやイッコさんが襲われるシーンは少し陳腐に感じてしまったというか・・・アイナが大好きな私としてはライブにおいての説得力やあの重みみたいなものが薄れてしまってるな・・・俄然ライブの方がいいな・・・なんてことが脳裏によぎってしまったのですがこれはアイナジエンドではないしな、と思うことで処理しました。これはキリエこれはキリエ(呪文)

 

ルカとイッコさんが出会った高校時代の撮影地が帯広だとは露知らず、聖地巡礼シタイワ~~~って思いながら。雪にまみれてよくわからんかったけど二人ともムートンブーツじゃなかったです??やっぱ北海道のJKはムートンなの!!!と道民30代女性のノスタルジーに刺さる。

真っ白な雪一面の中寝転ぶ感じ。吸い込む冷たい空気、風で飛び散る粉雪、びっくりするほど空気が綺麗だなと思える瞬間。まつ毛につく雪。静寂。雪国の人しか知り得ないあれを感じながらアイナが歌うオフコースの「さよなら」。

 

終わり方もあまりよくわからないが、よくわからんがなんか好き。みたいな感覚の映画だったような気もする。登場人物それぞれの気持ちにログインしていく力の強い人は面白いのではないだろうか。というかすごく疲れる。人の心の機微に敏感な方は非常に疲れると思う。だがそれがいい。それに尽きた。

 

kyrieの楽曲についてはやはりアイナジエンドが作詞作曲したものが好きだな、と私は思う。元々がファンだからね。ただその中でも「ずるいよな」は群を抜いて好きだ。歌い出しからグッと来てしまう。

 

ほら まただ あなたが笑うからずるいよな

よぎるのは 優しい痛みで 困るよな

 

映画に添ってこの歌詞を考察していくと、亡くなった家族に向けてるような歌になるんでしょうけども私はずーーーーーーーーーっと”なっちゃん”に歌ってるような気がしてならなかった。パンフレット読んだらアイナも「もしかしたらそうかも」みたいなことを書いていたのでまた胸がきゅっとしました。

 

そう、全編通してルカ(kyrie)は夏彦が好きだったんじゃないかと思えて仕方ない。お姉ちゃんの恋人、完全に妹としてしか扱ってくれない夏彦だけれど。それも贖罪のような形で。それでもルカが持つ夏彦への沢山守ってくれたと思った気持ちにはただのお兄ちゃんへの感謝ではなかったように思えました。

っとに岩井作品はそういう設定が好きだな!?!?死生観の表現というかね。でも何にせよ、良くも悪くも自分の美学を貫く岩井俊二が割と好きだって話。