まず初めに言うと、私はバットマンを知らない(笑)
でもすごく前評判がよかったので見たくてごく僅かな基礎知識だけネットから叩きこんで行きました。バットマンとジョーカーの関係性とかそのへんくらい。
もしかすると実写映画を見る時くらいそれが良かったのかもしれない。
知らない”から”面白いのかわからんけども。
皆各々好きなジョーカーがあるようだ。
私はそれがないので、多分余計なものが入ってこないのかも。
アーサー(ジョーカー)を取り巻く現状、社会の構図、全てが現代の日本に覚えのあることばかりで正直とてもしんどい。
きっとこういった感想はありふれてるんだろうけど、この映画の核となる部分は「結局何が、誰が悪なんだ」ってところだと私は思った。
アーサーは脳の障害で突然発作のように笑いだす。
オチを見た時にあれは先天性じゃないなあと思ったのだ。
そうせざるを得なかった人間の成れの果てではないのかと。
全て、それに繋がっていた。
犯罪者というのが皆”悪人”で皆”狂人”ではないし、そうせざるを得なかった人が起こすことだって沢山ある。しちゃいけないけど、私がその状態だった場合に果たして正しく生きていけるだろうかと思う。
アーサーを見ているとふと、瀬田宗次郎を思い出した。(るろうに剣心)
彼は虐待で喜怒哀楽の「楽」以外の感情が欠落している。
封印したと言ってもいいんだろうけど。
宗ちゃんは志々雄様が掲げる
「所詮この世は弱肉強食 強ければ生き 弱ければ死ぬ」
を信じていた。信じていなければ生きていけなかった。
剣心のような言葉をかけてくれる者が1人でもいたら、彼は狂わなかったんじゃないだろうかと結構な勢いで悲しくなった。
ジョーカーは本当に不運で片付けられぬほど人に恵まれなかった。
彼自身は心優しい人であったのに。
どんな人でもジョーカーを心に飼っているんだと思う。
環境、境遇そんなもの次第で簡単に怪物は生み出せる。
(先天性でやばいやつもいることはわかっている)
惹かれてしまうヴィランは過去に闇を抱えているのが定説だ。
定説?定石?まあ、多いよね。
そういう意味で、ジョーカーは確かに魅力的だった。
この映画を見たあとにジョーカーを「狂ってる」だとか「やばいやつ」だとか思う人っているんだろうか?
少なくとも私はジョーカーを取り巻いていた周囲の人々の方が断然狂っていたし、やばいやつだと思った。なので彼は目の前で殺人を犯したにも関わらず、唯一優しかった元同僚には手を出さなかったんだろうな。
あのシーンで私は泣いた。私の目にはあの元同僚の男性がものすごく優しいかと言うとそうではなかった。「普通」なのだ。気の優しい人だとは思ったが、あの時自分の殺人がバレる危険性を冒してまで守るほどではなかったように見えた。それほどまでに、だと思った。それほどまでに彼は優しい人に出会ってこなかったんだ、と。あれがどれほど救いでどれほど嬉しかったのだろうと。
孤独というのは人をどうにかしてしまうんだなあ。本当に。
アーサーが涙を流しながらピエロのメイクをする冒頭のシーン。
その時は感じなかったものが、終わったあとにドカンと来る。
戦っていたんだよなあ、毎日毎日。
もしかすると最後の日だったのかもなあ、とか。
人は何を心にため込んでいるかわからないし、些細なこと(映画の中で起きた出来事は酷かったけども)で自分が最後の引き金を引いたり、モンスターを生み出す可能性はどこにでもあって、そう考えると本当に恐ろしいなあと思う。出来れば優しくいたいなあと思うけれど。
それにホアキンの演技は何と言えばいいんだろう。
凄かった、としか言えなくて申し訳なさすぎる。
彼が笑えば笑うほど
踊れば踊るほど
化粧が濃くなればなるほど
衣装が派手になるほど
狂気が生まれていくほど
悲しくなる。なのに、恐ろしいほどかっこいいのだ。
びっくりする。歩く後ろ姿一つ、まったく違う。
仕草を変えるというのはそんなに簡単じゃないと思う。
めちゃくちゃかっこいい。
もうそれなら隣人のシングルマザーだって余裕でゲット出来たよ!?!?!って思うほどかっこいい。色気が急に出る。哀愁のある男がかっこいいのと同じなのかもしれないけど、とにかくかっこいい。もう、腹を決めたあたりのジョーカーを見てくれ。
最初の頃はピエロのメイクが馴染んでいなかったことがわかる。
単なる”アーサー”がピエロのメイクをしていただけの話だった。
あの日、あの瞬間、アーサーはジョーカーになったのだ。
ジョーカーという生き物になったのだ。
このかっこよさがみんなの愛したジョーカーなんだろう。
なんという色気。狂気が狂喜に変化した。
あの瞬間から今までの同情に近い想いは変わったように思う。
ただやはり、最後の最後まで悲しいが続いてしまった理由は、たまたま出会って殺してしまった嫌な奴らが一般庶民に嫌われている人で、ヒーローのような扱いを受けてるジョーカーを見て「ああ、まだ利用されている」と感じたところだ。なんて顔そのままの道化な人生だ。どこまでいってもこれか。ずるいなあ、本当にずるいなあと涙が出てきた。
可哀想、という言葉は人に言った瞬間に人を可哀想なものにしてしまうので簡単に言うのは嫌なのだけどもうその言葉しか出てこなかった。
彼が気付いているか、気付いていないかはわからないけれど。でも、わかっているから少しだけ、まだジョーカーの背中に哀愁が残っているんじゃないかと思った。
本当の悪は笑顔の中に。
とポスターには書いてあった。
あれはジョーカーのことじゃないなあ、多分なあ。
あとは音楽がすごくよかった。
シナトラの「That's Life」と「Send In The Crowns」
前者は勿論知っていたものの、もう1曲がわからず歌詞で「Crowns」が入っていたのでぴったりやん!と思って調べてみたら後者のものでした。ミュージカル曲だそうで、カバーなんだね。
「早くピエロを連れてきてほしい」
「いやピエロはここにいるのかも」
なんて自問自答がまさに。まさに。
ピエロをなんと取るか、は人それぞれなんだろうが。
しかし今更ながらピエロって単語そのものがすごいよな。
それだけで悲しさというか虚しさが表せるもんな。
って考えてたらふとジョーカーのメイクには涙がないなと思ったの。
でもどう考えてもアーサーはピエロだった。
と、考えるとあのメイクのシーン・・・・・ってなってまた泣けてきた(笑)
ああ、クラウンからピエロになってる、って。
クラウンのメイクに涙がつくとピエロになるんだよ。
また勝手な解釈だけど。どうなんだろうな。
で、「That's Life」で終わるんだよ~~~~~。
元々大好きなんだけどね、この曲。
台詞でも出てきて、これで締めるんだなあ。
ハイセンスか。
めちゃくちゃいい曲なんだ。
敵わないなあ、って言いたくなる男だよほんとに。
終わり。