ちょっと前まで私は自分が川谷絵音という人の才能をこんなに素晴らしいと思うなんて考えたこともなかった。
そもそもゲスの極み乙女について興味を持ったことがなかったし、
時々聞こえてくるその音楽も特に私の耳を奪うものではなかった。
友人に彼の別バンド”indigo la End"のチューリップという曲を教えてもらわなかったら、今も特に興味を持つこともなかったんだろうなと思う。
あの曲が大好きになってからこんなテクニックで曲を作る人なのか・・・と思ってしまったら最期。(私の場合は言葉の使い方に特に惹かれる)
何を聞いていても彼なら「ここでこんなトリックを仕掛けているのではないか」とか「これにも意味があるのではないか」とか気になってしまい、気付いたらどっぷりハマっているのだった。
一番新しいアルバムは名盤でしかなかった。
近年この曲が好き!!!と思うことは多くてもアルバム全体を通して名盤だ、と自分の中で太鼓判を押すことはそんなになかったように思う。まったく捨て曲がないし、飽きる気配がないのだ。
タイトルの通り、夜の匂いが濃い好きなテイストの曲ばかりだった。
多分そのうち他の曲もかくだろうけど今日はアルバムの最後を飾るこの曲について書きたい。
嫉妬させてよ それくらい好きにさせてよ
というフレーズが一体どちらの意味で受け取ればいいのか。で悩んだ。
①嫉妬出来るような関係性ではない
②(私が)嫉妬するくらい(あなたを)好きにさせてよ
①だろうとは思うけど、深みにハマるほど②のパターンもありかなと思ったりするからどんどん混乱していく(笑)
ここには2人の目線がある、と思う。
(コーラスやラストで女性の声が入ってるし。)
カメラワークを考えても両者の目線の歌だろうなと・・・。
嫉妬が出来ていない状態、と考えるとそれもそれで闇深いのだけれど全ての歌詞を読んでいくほどにこの人がそんなような状態だとは到底思えない。
私の好きに嫉妬させてよ、という意味ならまあわかりやすい。
「チューリップ」という曲のMV考察をした時にこの人はこんなところにまで仕掛けを撒いてくるのかと思ったわけで。衣装の色や、その細部にまで。
男性は茶色。女性は青。
酸素ボンベみたいなもので繋がっている2人。
男性はそれを外してから水槽?に沈んでしまう。
女性は付けたまま沈む。
地上にいる時はガラスで隔たれてる2人。
沈んでいくと同じ場所にいられるんだな、と。
男性はまったく息が出来ていないのに対して女性は水中から顔を出して息が出来ている描写があるのがなんとも。なんとも言えない。
2人は1+1になってしまった、の意味を結構長い時間かけて考えたのだけどこれはそうか。0.5+0.5だったのが1+1になった、なのかなと考えると離れてしまったことがよくわかる。秀逸。
誰でも知ってる単語と感情でわかりにくく表現するのすごいや。
女性は水中で男性を抱きしめている。
んだけどこれが助けているようにも見えて雁字搦めにして沈めてるようにも見えるのが超怖いなあ。一緒に居て、私のことで沈んでいて、と言いたいようにも見えて。
女性の服の色が青なのは水のことなのかなとかね。
私の中にいて、と。
苦しんでもがいて私の海の中に居てよ。とでも言わんばかりの。
女性の声が入ってる箇所の歌詞を拾ってみた。
いらなかったこんなスパイスは どうなってくのかな
2人は1+1になってしまった わかってる わかってるよ
嫉妬させてよ それくらい好きにさせてよ させてよ
あなたを見るたび痛くなってしまうくらい 好きにさせてよ
好きにならずにいたかった
あなたを知らずにいたかった
もうこの最後のフレーズの連呼は、切なくてしんどい。
結局夜の恋、とはなんだったのか。
夜と名がついてしまうと普通の恋人関係に受け取りにくいけども。
いらなかったスパイスとは何だったんだろうか。
「それでも好きだと走り出してしまうくらい」から繋げて「嫉妬させてよ」に繋げてしまうとそこまで覚悟がない、とか何もかも捨ててはそちらに行けない、のように感じてしまうけど。なんかそうでもない気がするんだよな。
それでも好きだと走り出してしまうくらい (好き)とか。
この人はテクニックのある人だ、と思うと無限に考えてしまって収拾がつかないけど私はいつもこういう人に惹かれる。大好きなんですよね。考えさせてくれる人が。